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秋篠寺の紅葉を愛で、伎芸天女と対面する

秋篠寺境内一面に広がる苔

(写真:秋篠寺境内一面に広がる苔)

秋篠の里、というと、その響きから、しっとりとした山里の風情を思い浮かべられる方が多いのではないでしょうか。

皇室の秋篠宮家も、この秋篠の里にちなんだ宮号ですしね。

しかし、実際に秋篠の里へと足を伸ばしてみると、抱いていたイメージとかなり異なる現実に直面することに……。

競輪ファンの方には申し訳ないのですが、近くに奈良競輪場があり、まあ、そういう感じの雰囲気なのです。

しかし、お寺の境内に一歩足を踏み入れると、別天地が広がっています。

まず、お寺の黄色みがかった土塀の風情が、なんともいい。

そして、寺域全体を覆う、美しい緑色の苔。

境内の所々に、灌木に混じって紅葉が植えられていて、晩秋の紅葉の季節は、苔の緑に紅葉が一層映え、とても美しくなります。

おそらくは、このお寺の中の小空間こそが、本来の「秋篠の里」の姿だったのではないか、と思えます。

環境破壊のすさまじい現代日本において、環境保全の見地から、寺院や神社の果たす役割の大きさを、改めて思い知らされます。

秋篠寺本堂と紅葉

(写真:秋篠寺本堂と紅葉)

ところで、秋篠寺を訪れる人の多くの、その目当ては"東洋のミューズ"ともいわれる「伎芸天女像」でしょう。

伏し目がちの目線、微笑みを湛えた少し厚めの唇、いかにも女性的な表情、そして、首をかしげた立ち姿の美しさが、幾百年もの永きにわたって、人々を惹きつけてきました。

秋篠宮妃紀子様と似ておられると話題になったことも。

この像をはじめて"東洋のミューズ"と呼んだのは、『風立ちぬ』の著者、作家の堀辰雄なのですね。

奈良の仏像の中では、薬師寺の薬師三尊像と、この秋篠寺の伎芸天女は、レプリカでもいいから手元に置いておきたいと切に願います。

インターネットで伎芸天の写真をさがしてみましたが、伎芸天女の、あの美しさが伝わるような写真は、なかなかないですね……。

あのお堂に行って、あの薄明かりの中できちんと対面しないと、天女様は本来の美しさで微笑みかけてはくれないのかもしれません。

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